交友者のメッセージ
2008-05-31
今の美術業界を考える(その220)
- Posted by rie at 2008-05-31 Sat 13:39:37
- Category : 今の美術業界を考える
札幌市立大学で授業をする
本を出版させていただいてから、講演の依頼を受けるようになりました。自分の勉強にもなるので、積極的に話す機会を頂くようにしています。
今回は、札幌市立大学のデザイン課の生徒さんむけに、‘日本の作家を世界に’というタイトルで2コマの授業をしてきました。基本的に、ここの学生さんたちは美術大学ではないので、作家という意識はあまりないのですが、ものづくりの作り手としての意識が高いので興味を持っていただけたようです。
いつも、私が講演するときは自己紹介をはじめとして、
1. 日本には素晴らしい文化の蓄積があるということ。
2. 日本の美術業界は現在厳しい状況にあること。
3. 文化をビジネスにして海外に発信するには何が必要かということ。
この3本柱でお話をさせてもらっています。今回は生徒さんたちにプレゼンテーションを2組してもらうことになっていたので、次のような課題をだしました。
「海外で展覧会を開くことになりました。どの都市を選びますか?また、そこで展覧会をするにあたりどのようなテーマでその地域の人々に何を伝えたいですか?」ということで、展覧会の企画をしてもらいました。さすが、若い人たちなので、面白いプレゼンテーションが聞けました。また、デザイン化ということもあり、2本とも商業デザインの企画で、いわゆる芸術的な作品発表の場所という意識のものではありませんでした。
私が講評させていただくにあたって、主催者の学生さんたちが何をもって自分達の展覧会の成功とするのかを聞き出しました。一組目のグループは、時間がなかったせいもあり、目的意識がはっきりとしていませんでした。日本の色使いをNYで発表したいという思いは伝わりましたが、具体的な商品やアイデア、そして企画の目的があまり明確ではありませんでした。
2組目のグループは日本のトイレ文化(ウオシュレットを含む)をインドのニューデリーで発表するというものでした。このグループは、よくアイデアが練られており、目的も集客することに絞っていたので、わかりやすい展開で企画のアイデアが発表されました。しかし、そこは学生同士のするどいつっこみがあり、ニューデリーでトイレがある家庭自体が富裕層であるから、対象者は非常に絞り込まれている。
だから、入場者は見込めないのではないか?というような質問が学生からでておりました。考えることは、非常に重要で、とてもいい勉強になったのではないかと自画自賛しています。
できることならば 「目的は海外に出て行って、自分の企画した商品を売ってくる」となると、もっとつっこんだ議論が展開できたと思います。人に見てもらうだけより、買ってもらうとなるとハードルが高いからです。これからの、若い人たちには日本人ならではの美意識に自信を持って、海外に出て売ってくるバイタリティを持ってもらいたいと思います。
本を出版させていただいてから、講演の依頼を受けるようになりました。自分の勉強にもなるので、積極的に話す機会を頂くようにしています。
今回は、札幌市立大学のデザイン課の生徒さんむけに、‘日本の作家を世界に’というタイトルで2コマの授業をしてきました。基本的に、ここの学生さんたちは美術大学ではないので、作家という意識はあまりないのですが、ものづくりの作り手としての意識が高いので興味を持っていただけたようです。
いつも、私が講演するときは自己紹介をはじめとして、
1. 日本には素晴らしい文化の蓄積があるということ。
2. 日本の美術業界は現在厳しい状況にあること。
3. 文化をビジネスにして海外に発信するには何が必要かということ。
この3本柱でお話をさせてもらっています。今回は生徒さんたちにプレゼンテーションを2組してもらうことになっていたので、次のような課題をだしました。
「海外で展覧会を開くことになりました。どの都市を選びますか?また、そこで展覧会をするにあたりどのようなテーマでその地域の人々に何を伝えたいですか?」ということで、展覧会の企画をしてもらいました。さすが、若い人たちなので、面白いプレゼンテーションが聞けました。また、デザイン化ということもあり、2本とも商業デザインの企画で、いわゆる芸術的な作品発表の場所という意識のものではありませんでした。
私が講評させていただくにあたって、主催者の学生さんたちが何をもって自分達の展覧会の成功とするのかを聞き出しました。一組目のグループは、時間がなかったせいもあり、目的意識がはっきりとしていませんでした。日本の色使いをNYで発表したいという思いは伝わりましたが、具体的な商品やアイデア、そして企画の目的があまり明確ではありませんでした。
2組目のグループは日本のトイレ文化(ウオシュレットを含む)をインドのニューデリーで発表するというものでした。このグループは、よくアイデアが練られており、目的も集客することに絞っていたので、わかりやすい展開で企画のアイデアが発表されました。しかし、そこは学生同士のするどいつっこみがあり、ニューデリーでトイレがある家庭自体が富裕層であるから、対象者は非常に絞り込まれている。
だから、入場者は見込めないのではないか?というような質問が学生からでておりました。考えることは、非常に重要で、とてもいい勉強になったのではないかと自画自賛しています。
できることならば 「目的は海外に出て行って、自分の企画した商品を売ってくる」となると、もっとつっこんだ議論が展開できたと思います。人に見てもらうだけより、買ってもらうとなるとハードルが高いからです。これからの、若い人たちには日本人ならではの美意識に自信を持って、海外に出て売ってくるバイタリティを持ってもらいたいと思います。
2008-05-17
今の美術業界を考える(その219)
- Posted by rie at 2008-05-17 Sat 16:20:34
- Category : 今の美術業界を考える
2008NYオークション
5月のGWの時期にあるNYのオークションに、社長が参加してきました。
4月に2度も中国に入ったので、今回私は画廊での仕事も気になるので留守番することにしました。
やはり、オークションもカタログだけで見るのと、実際に参加するのとでは大きな違いがあります。まず、頭に数字の入り方が全然ちがいます。また、実際にその場にいることでその作品がどのように売れたのか、自分の気になる作品が、どれぐらいの人に注目を集めたのか肌で感じることができるからです。
さらに、我々は画商ですし、お客様の注文をもらって、購入の代行をしたりもするので、オークション会社の方から事前にコンディションレポートといって作品の状態をレポートしてもらったり、実物をみてブラックライトをあてて実際の状況を確認したりもします。さらには、本当に買いたいものがある場合には、オークション会社の人たちを接待して、さらなる注文状況などを聞き取り調査したり、それでも足りない場合は何年もオークションに参加しているので、主だった海外の画商さんたちの意見も聞いたりもします。ですから、現場にいるのといないのとでは、情報の入り方は全く違うのです。
社長も人に説明したり、報告したりするタイプではないので、なかなか現場の様子はわかりづらいこともあるのですが、誰が現地に入っているか、セール会場の雰囲気を聞くことで、少しでも数字以外のオークション結果を聞き出しました。昨年度からの傾向ですが、売れる作品と売れない作品の差がでてきたことと、ナイトセールは好調ですが、やはりデイ・セールが厳しくなってきているように感じます。先日 ウオール・ストリート・ジャーナルにオークション事情という記事を読みましたが、絵画のオークションでは当日に欲しい人がいるかいないかで、落札結果は大分違ってきます。
オークション会社としては、金額の大きなものに関しては、見込み客が風邪を引いたからこられなくて不落札、というような事態は避けたいので、プレセールでお客様にある程度、入札の予約のようなものをもらったり、代理人をたててもらったりして、確実に販売できるような体制をとっているのです。ところが、デイ・セールの作品あたりになると 全ての作品にまで注文をとる時間的余裕も、人的資源もないので、出たとこ勝負になるわけです。
そこに、画商のチャンスも生まれるのですが、たまたまライバルがいないと上手く安く買えるわけです。また、出品するときの人間関係もあるので、オークション会社がどうしても販売しなければならない作品というのも、仕事上のつきあいであるわけですから、そういう作品から売れたりするわけです。
長年この業界にいると、カタログやオークション結果から、どれだけの情報をひきだすことができるかが、出来る画商と出来ない画商の分かれ道になっていくのだと思います。
銀座柳画廊 副社長 野呂 洋子
5月のGWの時期にあるNYのオークションに、社長が参加してきました。
4月に2度も中国に入ったので、今回私は画廊での仕事も気になるので留守番することにしました。
やはり、オークションもカタログだけで見るのと、実際に参加するのとでは大きな違いがあります。まず、頭に数字の入り方が全然ちがいます。また、実際にその場にいることでその作品がどのように売れたのか、自分の気になる作品が、どれぐらいの人に注目を集めたのか肌で感じることができるからです。
さらに、我々は画商ですし、お客様の注文をもらって、購入の代行をしたりもするので、オークション会社の方から事前にコンディションレポートといって作品の状態をレポートしてもらったり、実物をみてブラックライトをあてて実際の状況を確認したりもします。さらには、本当に買いたいものがある場合には、オークション会社の人たちを接待して、さらなる注文状況などを聞き取り調査したり、それでも足りない場合は何年もオークションに参加しているので、主だった海外の画商さんたちの意見も聞いたりもします。ですから、現場にいるのといないのとでは、情報の入り方は全く違うのです。
社長も人に説明したり、報告したりするタイプではないので、なかなか現場の様子はわかりづらいこともあるのですが、誰が現地に入っているか、セール会場の雰囲気を聞くことで、少しでも数字以外のオークション結果を聞き出しました。昨年度からの傾向ですが、売れる作品と売れない作品の差がでてきたことと、ナイトセールは好調ですが、やはりデイ・セールが厳しくなってきているように感じます。先日 ウオール・ストリート・ジャーナルにオークション事情という記事を読みましたが、絵画のオークションでは当日に欲しい人がいるかいないかで、落札結果は大分違ってきます。
オークション会社としては、金額の大きなものに関しては、見込み客が風邪を引いたからこられなくて不落札、というような事態は避けたいので、プレセールでお客様にある程度、入札の予約のようなものをもらったり、代理人をたててもらったりして、確実に販売できるような体制をとっているのです。ところが、デイ・セールの作品あたりになると 全ての作品にまで注文をとる時間的余裕も、人的資源もないので、出たとこ勝負になるわけです。
そこに、画商のチャンスも生まれるのですが、たまたまライバルがいないと上手く安く買えるわけです。また、出品するときの人間関係もあるので、オークション会社がどうしても販売しなければならない作品というのも、仕事上のつきあいであるわけですから、そういう作品から売れたりするわけです。
長年この業界にいると、カタログやオークション結果から、どれだけの情報をひきだすことができるかが、出来る画商と出来ない画商の分かれ道になっていくのだと思います。
銀座柳画廊 副社長 野呂 洋子
2008-05-10
今の美術業界を考える(その218)
- Posted by rie at 2008-05-10 Sat 15:20:35
- Category : 今の美術業界を考える
「国展」&「ArtistFile 2008」&「ルノワール&ルノワール」
先日、時間がとれたので1日で新国立美術館の、国展とArtistFile 2008、そして最終日だったので渋谷の文化村でやっていた「ルノワール&ルノワール」を鑑賞してきました。
画商が絵をみるのは勉強のためと、目をこやすためと、自分へのご褒美のためだと思います。今回は全て10歳の娘も一緒だったので、横で「疲れた~」とか、「おなかすいた~」というのをなだめながら、「どの絵が一番好き?」と楽しそうに聞きながら、鑑賞してまいりました。
まず、国展からはいりましたが、久しぶりの国展は、やはりカラーがあって、国展のイメージそのままでした。私が勝手に抱いている国展のイメージなのでなんとも言葉に表現しがたいものがありますが、国画会のイメージのついた作家さんは、島田尚三先生、大沼映夫先生、森本草介先生のイメージなのかもしれません。またうちのグループ展に出品していただいている久保田裕先生が抽象絵画を出品しているのにも驚きました。版画家の星野美智子先生の実物を見ることができましたし、友人が応援している川野裕一郎先生の大作が見られたのも良かったです。ある意味、狭い美術業界の内輪の世界を楽しむ展覧会でした。
ArtistFile 2008では、いわゆる美術館の学芸員の方が選んだ若手作家ということなので、どんな作家が流行なのだろうかと好奇心から覗いてみました。
正直に告白しますと、8名全員が知らない作家でした。こういう作品が流行っているのか・・・と思いましたが、娘が作品をさわろうとするので走り抜けるように鑑賞しました。いわゆる美術館の学芸員が好みそうな作品達が並んでいるように感じました。
このあたりで、かなり足がパンパンでしたが、最終日ということもあり「ルノワール&ルノワール」に行きますと、人の多さにびっくりしました。民間の経営ということもあるのでしょうが、経営的にはこちらの方が確実に採算がとれているだろうと思いました。と同時に、2ヶ月でTV番組も作っていて、かなりの経費をかけていることも知っていますが、非常に上手くキュレーションしているのと、オルセー美術館の名品を数多く出品しているのには驚きました。生意気にも、娘が「この作品知ってる。パリで見たよね。」というのを聞くと、子供の頃から本物を見せてきて良かったな~と実感します。私自身も子供の頃から慣れ親しんでいるルノワールを見ると ほっとするのが事実です。やはり、美術は体験することが大切です。子供の頃から本物を見て、そして若い頃から絵を買う習慣がないと、大人になってから、絵画を購入したり、楽しんだりするのは勇気の要ることなのかもしれません。
銀座柳画廊 副社長 野呂 洋子
先日、時間がとれたので1日で新国立美術館の、国展とArtistFile 2008、そして最終日だったので渋谷の文化村でやっていた「ルノワール&ルノワール」を鑑賞してきました。
画商が絵をみるのは勉強のためと、目をこやすためと、自分へのご褒美のためだと思います。今回は全て10歳の娘も一緒だったので、横で「疲れた~」とか、「おなかすいた~」というのをなだめながら、「どの絵が一番好き?」と楽しそうに聞きながら、鑑賞してまいりました。
まず、国展からはいりましたが、久しぶりの国展は、やはりカラーがあって、国展のイメージそのままでした。私が勝手に抱いている国展のイメージなのでなんとも言葉に表現しがたいものがありますが、国画会のイメージのついた作家さんは、島田尚三先生、大沼映夫先生、森本草介先生のイメージなのかもしれません。またうちのグループ展に出品していただいている久保田裕先生が抽象絵画を出品しているのにも驚きました。版画家の星野美智子先生の実物を見ることができましたし、友人が応援している川野裕一郎先生の大作が見られたのも良かったです。ある意味、狭い美術業界の内輪の世界を楽しむ展覧会でした。
ArtistFile 2008では、いわゆる美術館の学芸員の方が選んだ若手作家ということなので、どんな作家が流行なのだろうかと好奇心から覗いてみました。
正直に告白しますと、8名全員が知らない作家でした。こういう作品が流行っているのか・・・と思いましたが、娘が作品をさわろうとするので走り抜けるように鑑賞しました。いわゆる美術館の学芸員が好みそうな作品達が並んでいるように感じました。
このあたりで、かなり足がパンパンでしたが、最終日ということもあり「ルノワール&ルノワール」に行きますと、人の多さにびっくりしました。民間の経営ということもあるのでしょうが、経営的にはこちらの方が確実に採算がとれているだろうと思いました。と同時に、2ヶ月でTV番組も作っていて、かなりの経費をかけていることも知っていますが、非常に上手くキュレーションしているのと、オルセー美術館の名品を数多く出品しているのには驚きました。生意気にも、娘が「この作品知ってる。パリで見たよね。」というのを聞くと、子供の頃から本物を見せてきて良かったな~と実感します。私自身も子供の頃から慣れ親しんでいるルノワールを見ると ほっとするのが事実です。やはり、美術は体験することが大切です。子供の頃から本物を見て、そして若い頃から絵を買う習慣がないと、大人になってから、絵画を購入したり、楽しんだりするのは勇気の要ることなのかもしれません。
銀座柳画廊 副社長 野呂 洋子
今の美術業界を考える(その217)
- Posted by rie at 2008-05-10 Sat 15:02:27
- Category : 今の美術業界を考える
中国美術バブルの理由
ここ数年で、中国の美術が高騰しているのは新聞紙面を賑わせている通りだと思います。もともと投機好きな国民性に加えて、中国人は中国を応援する性質からあっという間に、中国現代美術が高騰しているのもよく理解できます。
しかし、それ以上に驚きの事実があったのです。それは、美術品の値上がりに対して個人は一切税金がかかっていないようなのです。さらに、企業で美術品を購入すると全額控除され、経費として認められるのだそうです。開いた口が塞がりませんでした。たとえ、10億円の利益をだした企業でもオークションや画廊で10億円分の美術品を購入すると、税金を払わないでよいのだそうです。ですから、利益を出した分だけの美術品の領収書で税金を払わなくてすむそうです。それでは、その購入した美術品をまた、翌年に売却して、2億の利益がでたらどうなるのかと質問すると、またその分の美術品を購入すればいいのだという答えでした。今年から中国でもオークションで売却した場合、3%の税金を払うようになったそうですが、それでも、中国人の投機筋の美術品愛好家の利益からすると微々たるものなのだそうです。国の制度がバブルを引き起こしているとしか、言いようがありません。
韓国では、そこまでではありませんが、200万円程度までの現存する自国の作家の美術品を購入すると経費の控除が受けられるそうです。それは、自国の文化を底上げするための制度として作られたものだと伺っています。
アメリカでは、韓国と同じようにアメリカの若い作家の作品は経費でおちる上に寄付という文化が根付いていて、美術品を国の定めた美術館に寄贈すると税額控除が受けられる仕組みになっていて、アメリカの美術館は寄付をいかにあつめるかが美術館の館長の大切な仕事になっています。
翻って、日本はどうでしょうか? 税額控除などは、とんでもありません。せいぜい10万円の版画程度です。さらに、寄付にいたっては、作品を寄贈した上に贈与税まで支払わなければなりません。最近、登録制度ができたといわれておりますが、重要文化財に指定されるような名品が年に数件、文化庁に登録されたものだけが、贈与税を支払わずに、国に寄贈できるという制度です。美術館に、コレクターが大切な美術品を展覧会に寄託すると、税務署が入って調査されるという話もしょっちゅう伺います。なんと、悲しいことでしょう。このような環境の中で、美術品を購入してくださる日本のお客様には心から感謝しなければなりません。
世界に向かって鎖国を始めた日本を、なんとか明治維新の時のように開国して、世界に再びジャポニズムを巻き起こしたいと思います。
銀座柳画廊 副社長 野呂 洋子
ここ数年で、中国の美術が高騰しているのは新聞紙面を賑わせている通りだと思います。もともと投機好きな国民性に加えて、中国人は中国を応援する性質からあっという間に、中国現代美術が高騰しているのもよく理解できます。
しかし、それ以上に驚きの事実があったのです。それは、美術品の値上がりに対して個人は一切税金がかかっていないようなのです。さらに、企業で美術品を購入すると全額控除され、経費として認められるのだそうです。開いた口が塞がりませんでした。たとえ、10億円の利益をだした企業でもオークションや画廊で10億円分の美術品を購入すると、税金を払わないでよいのだそうです。ですから、利益を出した分だけの美術品の領収書で税金を払わなくてすむそうです。それでは、その購入した美術品をまた、翌年に売却して、2億の利益がでたらどうなるのかと質問すると、またその分の美術品を購入すればいいのだという答えでした。今年から中国でもオークションで売却した場合、3%の税金を払うようになったそうですが、それでも、中国人の投機筋の美術品愛好家の利益からすると微々たるものなのだそうです。国の制度がバブルを引き起こしているとしか、言いようがありません。
韓国では、そこまでではありませんが、200万円程度までの現存する自国の作家の美術品を購入すると経費の控除が受けられるそうです。それは、自国の文化を底上げするための制度として作られたものだと伺っています。
アメリカでは、韓国と同じようにアメリカの若い作家の作品は経費でおちる上に寄付という文化が根付いていて、美術品を国の定めた美術館に寄贈すると税額控除が受けられる仕組みになっていて、アメリカの美術館は寄付をいかにあつめるかが美術館の館長の大切な仕事になっています。
翻って、日本はどうでしょうか? 税額控除などは、とんでもありません。せいぜい10万円の版画程度です。さらに、寄付にいたっては、作品を寄贈した上に贈与税まで支払わなければなりません。最近、登録制度ができたといわれておりますが、重要文化財に指定されるような名品が年に数件、文化庁に登録されたものだけが、贈与税を支払わずに、国に寄贈できるという制度です。美術館に、コレクターが大切な美術品を展覧会に寄託すると、税務署が入って調査されるという話もしょっちゅう伺います。なんと、悲しいことでしょう。このような環境の中で、美術品を購入してくださる日本のお客様には心から感謝しなければなりません。
世界に向かって鎖国を始めた日本を、なんとか明治維新の時のように開国して、世界に再びジャポニズムを巻き起こしたいと思います。
銀座柳画廊 副社長 野呂 洋子
2008-04-26
今の美術業界を考える(その216)
- Posted by rie at 2008-04-26 Sat 13:16:14
- Category : 今の美術業界を考える
北京アートフェア2008
今週は木曜日から北京にはいっています。数年ぶりに入った北京はオリンピック間近ということもあって、活気がありますし街も新しいビルが数多く建っており、きれいになった印象があります。
しかし、数時間もすると何やら咳がでてくるところをみると、空気が悪いのだなぁと実感しました。正直いって、ここでオリンピックをすること自体、選手たちはかなりの負担になるのではないかと心配してしまいました。
今週の北京はアートウイークで、北京のアートフェアだけでなく、時期を合わせてオークションもありますし、芸術区ではミズマアートギャラリーとワダ・ファイン・アートさんが北京でのギャラリーのオープニングもあります。
北京に到着した日にはアートフェアをみて、その後ガラス作家たちの展覧会をみてきました。驚いたのは、夕方に立ち寄った芸術区にある無名(?)の中国人のアトリエをみせて頂いたのですが、アートフェアで見てきた作家よりレベルが高くてびっくりしました。素晴らしいデッサン力に基づいた中国らしい油彩画で、50歳くらいの女流作家でしたが、中国人作家の底力のようなものを感じました。また、その芸術区もスケールが大きく、中国という国が芸術家をサポートしている姿勢を大いに感じてきました。上海でも感じたことですが、中国では国を挙げて芸術家と文化支援に力を入れていて、それが経済力と結びついて大きな産業になっていることを実感しました。
また、ミズマさんのオープニングとワダ・ファイン・アートさんのオープニングでは知り合いの画商さんたちにもお会いする中、中国やアジアのコレクターが実際にオープニングに参加されていることに感動しました。アジアのコレクターは日本人作家を本当に支援しているのだということを、この目で確かめて参りました。
ただ、コンテンポラリーの専門家の方がいうには、欧米のコンテンポラリーの市場とアジアのコンテンポラリーは全く別の市場であり、アジアのコンテンポラリーにたいする信用はいまひとつ出来ないけれど、市場の大きさとしては拮抗しているのは事実だとおっしゃっておりました。またアジアンコンテンポラリーは、まだまだ本物のコレクターが育っておらず、値上がり期待のコレクターで占められているという辛口の批評もありました。
また、中国で2大オークションのガーディアンオークションの下見もしてきました。
全てが中国アートで、書画骨董、家具、近代洋画、コンテンポラリーと全て中国人作家のもので占められておりましたが、いわゆる30台、40台の日展や院展にでてきそうな作風の作家達の作品が日本円で数百万円のエスティメートがついていて、その量も莫大だったのには驚きました。多分この週末に100億円近くの売上をつくるのだと思います。
全てにおいて、スケールの大きさに驚いてきましたが、美術市場において日本は中国の10分の1の大きさなのだろうと肌で感じてきました。これから未来において、美術の世界においても中国は無視できない大国であり、改めて日本を文化立国として発展させるために働くことを堅く心に誓って参りました。
銀座柳画廊 副社長 野呂 洋子
今週は木曜日から北京にはいっています。数年ぶりに入った北京はオリンピック間近ということもあって、活気がありますし街も新しいビルが数多く建っており、きれいになった印象があります。
しかし、数時間もすると何やら咳がでてくるところをみると、空気が悪いのだなぁと実感しました。正直いって、ここでオリンピックをすること自体、選手たちはかなりの負担になるのではないかと心配してしまいました。
今週の北京はアートウイークで、北京のアートフェアだけでなく、時期を合わせてオークションもありますし、芸術区ではミズマアートギャラリーとワダ・ファイン・アートさんが北京でのギャラリーのオープニングもあります。
北京に到着した日にはアートフェアをみて、その後ガラス作家たちの展覧会をみてきました。驚いたのは、夕方に立ち寄った芸術区にある無名(?)の中国人のアトリエをみせて頂いたのですが、アートフェアで見てきた作家よりレベルが高くてびっくりしました。素晴らしいデッサン力に基づいた中国らしい油彩画で、50歳くらいの女流作家でしたが、中国人作家の底力のようなものを感じました。また、その芸術区もスケールが大きく、中国という国が芸術家をサポートしている姿勢を大いに感じてきました。上海でも感じたことですが、中国では国を挙げて芸術家と文化支援に力を入れていて、それが経済力と結びついて大きな産業になっていることを実感しました。
また、ミズマさんのオープニングとワダ・ファイン・アートさんのオープニングでは知り合いの画商さんたちにもお会いする中、中国やアジアのコレクターが実際にオープニングに参加されていることに感動しました。アジアのコレクターは日本人作家を本当に支援しているのだということを、この目で確かめて参りました。
ただ、コンテンポラリーの専門家の方がいうには、欧米のコンテンポラリーの市場とアジアのコンテンポラリーは全く別の市場であり、アジアのコンテンポラリーにたいする信用はいまひとつ出来ないけれど、市場の大きさとしては拮抗しているのは事実だとおっしゃっておりました。またアジアンコンテンポラリーは、まだまだ本物のコレクターが育っておらず、値上がり期待のコレクターで占められているという辛口の批評もありました。
また、中国で2大オークションのガーディアンオークションの下見もしてきました。
全てが中国アートで、書画骨董、家具、近代洋画、コンテンポラリーと全て中国人作家のもので占められておりましたが、いわゆる30台、40台の日展や院展にでてきそうな作風の作家達の作品が日本円で数百万円のエスティメートがついていて、その量も莫大だったのには驚きました。多分この週末に100億円近くの売上をつくるのだと思います。
全てにおいて、スケールの大きさに驚いてきましたが、美術市場において日本は中国の10分の1の大きさなのだろうと肌で感じてきました。これから未来において、美術の世界においても中国は無視できない大国であり、改めて日本を文化立国として発展させるために働くことを堅く心に誓って参りました。
銀座柳画廊 副社長 野呂 洋子
2008-04-20
今の美術業界を考える(その215)
- Posted by rie at 2008-04-20 Sun 14:58:44
- Category : 今の美術業界を考える
上海アートフェア2008
4月16日から19日の日程で上海アートフェアに来ています。今回は残念ながら出展ではなく、別件で上海に仕事がありましたので、時期を合わせて上海アートフェアを見に来ています。1年ぶりではありますが、南京路など主要な道路は清掃が行き届いていて驚きますが、裏路地に入るとまだまだ汚いままです。しかし、上海のダイナミックな動きには毎回目を見張るものがあります。
今回、見に来ているといいながら、日本の同業者の方はたくさん来ておりますし、新たに出展している方々とお話しながら、東京にいるよりは仕事になると思います。毎年みていると、中国の変化を強烈に感じます。
昨年度に中国現代アート展を開催しましたが、彼らはもう上海のアートフェアは卒業だそうで、中国では美術館での展覧会にしか興味がないようです。つまり、オークションにも作品が出てくるようになり、中国人のお客様がアートフェアで購入しても、すぐにオークションに出品する人が多いので、アートフェアに作品をだしたくないのが本音のようです。
今年の春の上海アートフェアを見て感じることは、コンテンポラリーの展示がメインで昨年までみられたような、写実作家や半具象の作家はかなりなりをひそめたようです。それだけ、上海でのアートフェアではコンテンポラリーが中心になりはじめ、日本からの出展画廊もコンテンポラリーの作家を皆さん出品されておりました。ここ数年アジアのオークションにおいて、アジアンコンテンポラリーが活況であることと、日本人の新人作家に注目(特にクリスティーズ香港において)されていることを意識したような品揃えでした。ある意味、今日本に求められているコンテンポラリーとしての要件は、ポップであることと、アニメの要素があること、そして日本画の要素が含まれていると受けが良い様に感じます。その中でちょっとシニカルだったり、エログロだったりするとマニアのコレクターに受けているようです。
ただ、かなり違和感を感じるのは、一次マーケットと二次マーケットが近すぎてしまって、新作を発表した年にオークションに出ていたり、クリスティーズ香港においては、作家のアトリエから直接オークションにでているのではないかと思われる作家もいたりします。さらに、そういう作家がアートフェアで赤ピンがついているような状況で、まさに画商の仕事は何なのかを改めて考えさせられる日々を過ごしています。そういう言う意味において、日本における画廊の仕事を一番忠実にしているのがデパートなのかもしれません。もう一度、基本に立ち返って、絵が好きで、家に絵を飾るために購入するお客様を増やしていくことが画廊に求められているのだと思います。
銀座柳画廊 副社長 野呂 洋子
4月16日から19日の日程で上海アートフェアに来ています。今回は残念ながら出展ではなく、別件で上海に仕事がありましたので、時期を合わせて上海アートフェアを見に来ています。1年ぶりではありますが、南京路など主要な道路は清掃が行き届いていて驚きますが、裏路地に入るとまだまだ汚いままです。しかし、上海のダイナミックな動きには毎回目を見張るものがあります。
今回、見に来ているといいながら、日本の同業者の方はたくさん来ておりますし、新たに出展している方々とお話しながら、東京にいるよりは仕事になると思います。毎年みていると、中国の変化を強烈に感じます。
昨年度に中国現代アート展を開催しましたが、彼らはもう上海のアートフェアは卒業だそうで、中国では美術館での展覧会にしか興味がないようです。つまり、オークションにも作品が出てくるようになり、中国人のお客様がアートフェアで購入しても、すぐにオークションに出品する人が多いので、アートフェアに作品をだしたくないのが本音のようです。
今年の春の上海アートフェアを見て感じることは、コンテンポラリーの展示がメインで昨年までみられたような、写実作家や半具象の作家はかなりなりをひそめたようです。それだけ、上海でのアートフェアではコンテンポラリーが中心になりはじめ、日本からの出展画廊もコンテンポラリーの作家を皆さん出品されておりました。ここ数年アジアのオークションにおいて、アジアンコンテンポラリーが活況であることと、日本人の新人作家に注目(特にクリスティーズ香港において)されていることを意識したような品揃えでした。ある意味、今日本に求められているコンテンポラリーとしての要件は、ポップであることと、アニメの要素があること、そして日本画の要素が含まれていると受けが良い様に感じます。その中でちょっとシニカルだったり、エログロだったりするとマニアのコレクターに受けているようです。
ただ、かなり違和感を感じるのは、一次マーケットと二次マーケットが近すぎてしまって、新作を発表した年にオークションに出ていたり、クリスティーズ香港においては、作家のアトリエから直接オークションにでているのではないかと思われる作家もいたりします。さらに、そういう作家がアートフェアで赤ピンがついているような状況で、まさに画商の仕事は何なのかを改めて考えさせられる日々を過ごしています。そういう言う意味において、日本における画廊の仕事を一番忠実にしているのがデパートなのかもしれません。もう一度、基本に立ち返って、絵が好きで、家に絵を飾るために購入するお客様を増やしていくことが画廊に求められているのだと思います。
銀座柳画廊 副社長 野呂 洋子